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東野圭吾著 「さまよえる刃」

 何故か評価の善し悪しの分かれるようだが(アマゾンのレヴューによると)、私はかなり良い作品だと思う。
少年法の在り方を問う問題作で、安易に、「面白かった」などとは言えないが、流石に話の展開は大変巧い。
そして、読み手を主人公の「長峰」や、彼に同情し協力してしまう「和佳子」や、長峰を追う刑事たちの気持ちに見事になりきってしまう。確かに、いつ、「長峰」と同じ立場に立たないとも限らないので、気持ちが入りやすいというのもあるが…
 最後は、まああれくらいしか終り方はないだろうなあ、最後のサスペンスの盛り上げ方もうまい。80点
…少年法は被害者の為にあるわけでも、犯罪防止のためにあるわけでもない。少年は過ちを犯すという前提のもと、そんな彼らを救済するために存在するのだ。そこには被害者の悲しみや悔しさは反映されておらず、実情を無視した、絵空事の道徳観がある。…

重松清著 「舞姫通信」

 重松清の処女作ではないが、ごく初期の作品。難しいところだが、好き嫌いが分かれるだろうなあ。
 高校の新任教師「岸田」は、5年前、双子の兄が自殺する、という過去を持っている。武蔵が丘女子学院高校にも、10年前、校舎から飛び降り自殺をした女子生徒がいた。その後、「舞姫通信」なる自殺した「舞姫」を賛美するような一枚のメッセージが学内に配られている。一方、「岸田」の双子の兄の元恋人、佐智子の芸能プロに所属する、タレント「城真吾」が自殺未遂の経験者として世に出そうとしている。城真吾は、テレビ番組でこう発言する…「教えてほしいんです。僕たちは、生きてなくちゃいけないんですか?」…大人たちは困惑する。型どおりの答えか、妙に学識ぶったわけのわからない言葉しか出てこない。大人たちは、本当に納得できる分かりやすい言葉を探すことができない。やがて、佐智子は「岸田」の子供を妊娠し、生むことを決断する。そこに、岸田と佐智子は、なんとなく命の大事さを感じ始める。岸田は、舞姫通信にこう綴る。…長生きすることが幸せだなんて、口が裂けても言いたくない。いつラストシーンが始まってもいい。長生きしたければ、その終わりを遅らせればいい。君のラストシーンは、生きている限り終わらない。人は死ねる。いつ。いつか。いつでも。人はいつか死んでしまうし、いつでも死ねる。すれ違うだけの短い「いま」を君と一緒に過ごした僕は、君に祈るしかない。君の「いつか」が、ずっと、ずっと、遠い日でありますように。長い旅が短い旅より楽しいとは限らないし、ただのおせっかいかもしれないけれど。…
 佐智子は、あやうく流産しかけ、2000グラムの超未熟児を出産する。そして、岸田にこう告げる。…あたし、この子を、悲しい思いさせるために産んじゃったのかもしれない。悲しんで、起こって、あたしのこと恨むかもしれないね。でもいいよね、ひどい母親でも、生きてやるんだ、ずっと、ずーっと、生きてやるんだ、生きなきゃいけなくなっちゃたんだもん、この子のおかげで。… 自ら「死」を選ぶことの、悲しくもあるしできればそんなことはして欲しくはない。でも、その死に至る決断、思いは尊重してあげたいと思う。そう、人間はいつでも死ねる。だからこそ、出来ればその、決断は安易にして欲しくはない。その「いつか」の前に出来る限り、勇気を持って生きていきたい。75点

ヘルマン・ヘッセ著 「郷愁」~ペーター・カーメンチント~ 高橋健二訳

 ヘッセの処女作。山育ちの主人公、ペーター・カーメンチントがいろいろな人との出会いを経て、成長していく姿を描く。
 まあ、正直に言ってまだ「習作」と言っていいんじゃないかな。まあ、身障者のボピーとペーターとのかかわりは、わりとよく描けているが、大事な女性のエリーザベトの描き方が雲をつかむようにぼんやりしていて、イマイチぴんとこない。読んでいて、古典的な小説の味わいはあってよいのだが、どうも食い足りない。27歳のヘッセの若書きの作品として納得しておきましょう。60点

五木寛之著 「戒厳令の夜」

 昭和51年作。当時、ベストセラーだった記憶がある。そのころは、五木寛之と言えば、「青春の門」しか興味がなく、それ以外の作品は全然手にも取らなかった。間違いなく、戦後日本を代表する作家のひとりであるのだが… 今まで、忘れていた自分に「反省」しかない。
物語は学生運動で過去に逮捕歴のある元美術史生徒の江間隆之が、ある福岡の酒場である、一枚の「絵」に出会ったところから始まる。その絵はスペインの幻の画家パブロ・ロペスのものだった。江間は恩師の秋沢助教授を訪ねるなどいろいろと調べるうちロペスの幻のコレクションが、日本のどこかに眠っていることを突き止める。直後、秋沢助教授が謎の自殺を遂げる。江間は、右翼の老浪人、「鳴海望洋」秋沢助教授の娘「冴子」らとともにロペスの幻のコレクションを追い始める。
 昭和23年ごろ、炭鉱国管疑獄事件が起きる。その背後のもみ消し工作にどうやらロペスのコレクションが使われたらしい。そのコレクションの行方は右翼の大物政治家「原島雄一郎」の手元にあるらしい。鳴海望洋は、かつてのネタをもとに原島を揺さぶり、コレクションを手に入れようとするが、逆に江間や冴子とともに生命を狙われる。何とか鳴海の従臣「黒崎」の機転で命は助かったものの、江間と鳴海は全国に指名手配されてしまう。鳴海は黒崎に命じ、黒崎の昔の仲間により、自衛隊のはぐれ者部隊を組織し原島の手から、ロペスの幻のコレクションを手に入れる。しかし、鳴海と黒崎は、徐々に追い詰めれ命を落とす。しかし、コレクションだけは、鳴海の協力者「康美」らのてにより、無事脱出に成功する。その頃、江間と冴子は自らを「外道」
と称する学者「水沼隠志」先生のもとにかくまわれる。そこで初めて二人は結ばれる。鳴海や黒崎の命を賭けて、手に入れたロペスの幻のコレクションを本来の持ち主の「チリ」の政府の元へ返すためチリの首都、サンチァゴに向かう。おりしも、チリはアジェンデによる社会主義政権下にあるが、ピノチェト将軍による軍事クーデターの「前夜」にあり、ついにクーデターの日となった。そして、再びロペスの幻のコレクションは、日の目を見ることもなく、埋もれていった。
 極めて、ざっとであるがこんな粗筋かな。この中に、いろいろな話の要素が詰まっていて飽きさせない。冒険小説的なストーリー展開をする価値思えば、民俗学の漂白の民「サンカ」についての問題を提起。そして「戒厳令下」のチリの姿を描くことにより、炭鉱国管疑獄や原島や鳴海のかかわりから今後の日本のあり方に疑問を提起している。何ともいろいろな感想を持ち、考えさせられる小説であった。
 この作品は、ほぼ35年も前に書かれたが、まさに今のそしてこれからの近い将来の日本を暗示しているような気がする。本当に今の政治の在り方でいいのか読みながらさらに疑問を強く持ってしまった。
 かなり昔「サンチァゴに雨が降る」という映画が公開され、題名だけは記憶に残っていて(未見ではあるが)
ああ、そういうことだったのと初めて知った。(「サンチァゴに雨が降る」とはクーデターが発生したことの、マスコミからの国民への合図。)
 とても読みごたえがあり、面白かった。80点。

雫井脩介著 「栄光一途」

 雫井脩介の処女作。処女作なのに、主人公が女性というのは意外性がある。なんらかの著者の意図はあると思うのだが、まあ、望月篠子の描き方は、まあ通り一遍の平凡。あまり、キャラを立たせすぎるとストーリーに入り込みにくくなるので仕方のないことだとは思う。
 ストーリーの流れは、語り上手なので巧く読ませてくれるが、最後のどんでん返しでの角田志織の変貌ぶりはどうかと思う。確かに、途中でクレペリンテストの結果がどうのこうのとあるので一応の複線は張ってあるのだが、最後で何かありそうだなって感じはあるんだけど、唐突感は否めない。相棒の「深紅」もやや漫画チックなのが気になるし。ルパン三世の石川五右衛門みたい。
 でも、柔道とドーピングというちょっと難しいテーマに取り組んだチャレンジ精神は評価したい。75点。

重松清著 「流星ワゴン」

 簡単に言えば、タイムスリップもののファンタジー。こういった作品を読んでいると、一人の父親としてどのように、妻や子供に接していけばいいのか、考えさせられる。勿論、誰も以前に父親になったわけでもなく、初めて父親としての人生を送っている。日々、子供への接し方はこれでいいのか?とは言え自分の生き方をそう変えられるわけでもなく自分なりの父親像を送っているのだが。ただ、作中の橋本さんのように、子供を喜ばそうと不得意な運転に挑戦し取り返しのつかない事故はおこさないようにはしているが、ただ、今後子供たちの成長にどのように対処していけばいいのか、正直私には未知数である。ある意味、「行き当たりばったり」なのだ。家族の幸運を願うばかりである。タイムスリップをして、やり直すわけにはいかないのだから。80点。

堂場瞬一著 「帰郷」

 刑事、鳴沢了シリーズの第5弾。いつもの通りこの作家は、安定している。しっかりとヒットを飛ばしてくれる。あまりホームランはないけど。
 今回は、故郷新潟に父の葬儀でもどった鳴沢が、父の残した唯一の時効いりの未解決殺人事件に部外者ながら追うはめになる。事件を追ううちに、知りえなかった父の姿が浮かび上がり、やがて父との確執はうすれ、鳴沢はようやく父としっかりと向き合えるようになる。
 正直事件としての面白さはさほどないが、鳴沢の人間臭い刑事の姿が回を追うごとに明確になってきてつい読んでしまう。また、読むだろうなあ。75点。

井上靖著 「風林火山」

 井上靖の描く戦国時代。武田信玄、山本勘助そして勝頼の母でもある、由布姫を中心にその時代を描いている。だが、なんとも司馬遼太郎の歴史小説を読みなれているせいか、どうもそのタッチにしっくりこないというか、なんか不満が残る。司馬遼太郎なら、もっと描きこむだろうなんて感じながら読んでしまう。本来それではいけないのだが、まあその辺は素人なので許してほしい。長さも中途半端な感じがしてしまう。その時代に入って行って、さあこれからという時に、もう「川中島の戦い」になってしまった感じ。残念!70点。

ヘルマン・ヘッセ著 「車輪の下」 高橋健二訳

 少年少女名作全集の定番。だが、本当に位置づけでいいのか?正直に言って、決して名作にあらず。あまり他の作品をよんでいないが、へっせの作品の中でも出来のいい作品とは言えないのではないか。
 まず、模範的な優等生ハンスがせっかく合格した神学校で、精神を病んでしまい(今でいうところの鬱病か)故郷に戻って機械工になるのだが、精神を病むきっかけがきわめて曖昧で、納得しがたい。そして、わずかな時間のエンマとの恋(ただ遊ばれるだけ)で、さらに精神的ダメージを受け、そののち仲間と酒を飲んでその帰りに、死を迎える。死の原因は、事故死なのか自殺なのかは不明確。ただ、ハンスにあまり生きる気力がなかったことは確かなよう。
 まあ、ハンスの死に至る内的外的要因が、とにかく不明確で、もうちょっと何とかならないものかと思う。
50点だな。

東野圭吾著 「鳥人計画」

 東野さんの1989年作、10作目にあたる。少し厳しい言い方になるが正直いっていただけない。作中でも焦点となっている「動機」が、どう考えても説得力不足、殺人方法も必然性がなく、最終的に犯人が一人ともいえないのだが、これもまた、「それがどうした」と言った感じで、ストーリーの必然性に欠ける。まあ、駄作かな。50点。

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