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誉田哲也著 「ストロベリーナイト」

 TVドラマの原作であったり、書店でよく見かけていた「誉田哲也」の作品を初めて読んでみた。まあ、人気になるだけのことはあり面白く読ませる。だが、どうも、劇画チックなシーンや二時間ドラマ的で急転直下に事件が解決に向かう流れとかが、どうも安易に流れている気がして、気に入らない。初めからTVを意識して書いているようで、TVの脚本っぽいせりふもチラホラ出てくる。どうも、本好きにはなんか、しっくりこない。もう少しこの作家に付き合ってみましょう。60点。

司馬遼太郎著 「新史 太閤記」

 多くの、小説ドラマで伝えられてきた「太閤秀吉」の全国統一にいたるサクセスストーリー。確かに数多くの逸話などから「秀吉」偉大さは、当然であるし、類まれな人物であることは疑いない。もちろんそこに、司馬遼太郎らしい、視点、人物描写も加わり大変面白い読み物になっている。特にどこが、今までの武将と違い、どのような思考回路で、物事をとらえてきたかが面白い。著者が言うには、「秀吉」が初めて「商人的」な思考で領土の拡大を行い、決して力で征服しようとはせず、「利」をといて人を味方につけてきた初めての武将だという。そうなると、「信長」は「秀吉」の上司である世襲の会社の社長ということになる。やり手だが、短気でわがままで、しかも冷酷な。
 こう考えていくと、信長も秀吉あっての信長であり、家康も、秀吉がいたからこそ、その後の天下泰平の徳川300年の代を築きあげることが出来たといえるだろう。
 まあ、面白いことは面白いのだが、秀吉のような、上司「信長」のお気に入りになり、巧く世の中を渡り歩いてきた人間は、どうも好感が持てない。これは、不器用にしか生きられず自分の気持ちを貫くことしかできない私のたんなる、ひがみでもあるのだが… 70点。

宮部みゆき著 「誰か Somebady」

 最初は、サスペンスものかな、と思っていたが、なんと、宮部みゆき風の「ハードボイルド」であった。義父でもある社長の業務命令ともいえる依頼を受け、元社長の運転手の死を探ることになってしまった編集者の姿を追う、あまりハードボイルドっぽくないミステリである。ハードボイルドとしは、物足りないのだが、それはそれとして宮部みゆき風の表現とストーリーテリングが光るなかなかの佳品。たとえば、このシーンなどは印象に残る… 
 浜田はあわてて携帯電話をつかむと、大急ぎで席を立った。あんまり急いだのでテーブルにぶつかり、グラスが揺れた。 「おっと、すみません」  謝りながら、浜田は走って店から出ていく。エッチングガラスのドア越しに、携帯電話を耳に当て、こちらに背を向けている彼の姿が見えた。  私は振り返り、聡美に微笑みかけた。「忙しそうですね」  聡美は私を見ていなかった。話しかけられたことにさえ気づいていないようだった。彼女は浜田を見つめていた。静止画のようだった。楽しい会話の名残りで口元は笑っていたが、それ以外は停まっていた。コンピューターにエラーが出たように。何かが、誰かが、彼女に対して間違った操作をしたように。
 流石です。75点。
 

テーオドール・シュトルム著 「みずうみ」

 1817年生まれ、1888年没のシュトルムの1849年から1862年にかけての作品集。「みずうみ」「ヴェローニカ」「大学時代」の三篇を所収。三篇とも、若き日の恋愛美少女への憧れをわりとみずみずしく描いた作品になっている。ただ、まあ悪い小説ではないが、歴史に残る名作とは言えないので、いずれ忘れ去られる名前なんだろうと思う。ただ、時々この手の作品を読むと心洗われる気がする。65点。

宮本輝著「月光の東」

 宮本輝氏の作品は、語りがけっこう好みなので、いくつか読んでいるが、この作品はいまひとつ。「ねえ、私を追いかけて。月光の東まで追いかけて」て、謎めいた。ワードを残していく、なんて、不自然でしょ。
 ひとりの不遇だが、美しい女性の人生と、その周辺の翻弄される男女の姿を描いているのだが、今回の作品はあまり共感できないんだよね。なんか、宮部みゆきの「火車」を思わせるプロットだけど、ストーリーに推進力が不足してるのか、あまり面白くない。65点。

佐々木譲著 「ベルリン飛行指令」

 1940年、日独伊三国同盟締結後、ナチスドイツが、イギリス本土空襲を視野に入れ、日本に対して「新型戦闘機《零戦》」の移送を要請する。特命を受けた安藤大尉、乾空曹の二人のパイロットが、日本からベルリンに向けて飛び立つ。といった、ストーリーなのだが、二人のパイロットをはじめ計画を実行する、大貫少佐、山脇書記官など、周囲の人物もしっかりと個性豊かに描かれていて、とても好感が持てる。計画から実行に至る流れや零戦の描写などとても丁寧で無駄なく描かれているのとても嬉しい。傑作85点。

道尾秀介著 「片眼の猿」

 またしても、なんか謎めいた感じ。いかにもなんか隠し玉を用意してういる風に始まり。わざと、読者にすっきりさせないように、進んでゆく。出てくるキャラクターが、どこか変な気もするがなんかはっきりしない。
 そこがまあ、読者を裏切って、見事に予想以上の種明かしするところが、この作家の非凡なところ。まあ、びっくりするわ。しかも、ちゃんとミスディレクションもちりばめられていて、「ああ、そうか」と納得。
 でも、「向日葵の咲かない夏」の超ウルトラC級の着地ほどではなかったけど、まあ、これはこれで。
 まあ、あまり従来のミステリとして、読むと「えー、そうなるー?」と展開に疑問を持ってしまうので、道尾作品は、どちらかというと、幻想小説と言ってもいいのかな。そして、ちゃんと、読者へのメッセージも伝えている。
…きみの心の傷は治る。傷ついた自尊心はいつでももとのかたちに戻すことができる。人間の心は、ほんとうは永遠に傷ついたりなんて出来やしないんだ。はじめの傷が塞がろうとしたところに、また言葉を詰め込んで,とがった爪でひっかいて、新しい傷を重ねているだけなんだよ。…   人間というのはけっきょく、記憶なのではないだろうか。姿かたちが人間をつくるのではないし、見聞きしてきた事実が人間をつくるのでもない。事実の束をどう記憶してきたか。きっとそれが人間をつくるのだろう。そして、事実の束をどう記憶するのかは、個人の勝手だ。自分自身で決めることなのだ。…
 そして、最後にこうつぶやかせる。…眼に見えているものばかりを重要視する連中に、興味はない。 少しきびしめで75点。

重松清著 「定年ゴジラ」

 完全三人称で書かれている。まあ30代前半であった、作者にとって、定年を迎えた男性を、描くのだからまあ、妥当なところか。ストーリーは、定年を迎えたばかりの、ニュータウン「くぬぎ台」に住む、元銀行員「山崎さん」を中心に、定年を迎えた男性をなんとも哀愁深く、愛情をもって描かれる。
 連作短編集ということらししいが、そんな意識しないで長編として読んでいた。一貫性はあるので、全く問題なさそう。
 「くぬぎ台ツアー」 最後に辛口の宮田助教授が「くぬぎ台」を「D」評価としつつも、山崎さんらの対応受け、次のように結ぶ…定年」を迎えた世帯主も増えている。仕事に追われ町や家族を顧みる余裕のなかった父親たちが、この街でどう自分の居場所も見つけ、老後をどう過ごしてゆくのか。若い世代にとっても、それは”ニュータウンでの老い方”のお手本もしくは反面教師となるだろう…
定年を迎えた父親が、時間的余裕ができ、地域や家族に何を残すことができるのか。伊達に辛い思いをして、仕事をしてきたをけではないのだ。きっと何かできるはず。…と信じたい。
 あと、「家族写真」か、…そういえば、しばらく、家族で写真なんて撮っていないなあ。しばらくぶりに、撮ってみるか、子供たちも大きくなってきたし。 
 80点。

司馬遼太郎著 「竜馬がゆく」

 ようやく、全8冊読み終えた。やはり、司馬遼太郎の代表作と言われるだけあって、書き手の気持ちが伝わってくる。坂本竜馬とその周辺の人物像、時代の空気感、いったいなにが日本に起きていたのか、ひしひしと伝わってくる。間違いなく、昭和の傑作と称せられるにふさわしい。
 ただ、ひねくれ者の私としては、なんでそこまで坂本竜馬の人間性に多くの、どちらかと言えば「保守的」ともいえる人々が、魅了され時代の変革の一端を担うことになってしまうのか?いくらなんでも、出来すぎかなーという気がしてならない。単なる「一志士」である。奇跡的と言えば奇跡的な出来事であり、奇跡的な時代なんだろうけど、…。まあ竜馬へのやっかみかな。
 竜馬が「大政奉還」をなしおえ、次の政治体制を西郷隆盛に問われて、…俺は日本を生まれ変わらせたかっただけで、生まれ変わった日本で栄達するつもりはない。…仕事というものは、全部やってはいけない。八分まででいい。八分までが困難の道である。あとの二分はたれでもできる。その二分は人にやらせて完成の功を譲ってしまう。それでなければ大事業というものはできない。
 まあ、立派なことよ!どうしても、ジェラシーが先に立ってしまう。まあ、作品はすばらしいので、90点。

堂場瞬一著 「讐雨」

 刑事・鳴沢了のシリーズのなかでは、もしかすると割とストーリー性に富む、サスペンスフルな一作だと思う。
 まず、冒頭のシーンで鳴沢が、車両の爆破現場に居合わせ、怪我を負うところから始まる。つかみはOK!である。その後、爆破犯からの犯行声明の電話があり、また、東京のどこかでダイナマイトを爆発させるとの脅迫がある、ただし、拘留中の連続少女殺害事件の犯人「間島」を釈放すれば、爆破計画は中止するとのこと。鳴沢らは、関係者をあたっていくうち、「間島」が最後に殺害した少女が発見される。そして、その父親の「ヤクザ」の「榎本」が捜査線上に浮上してくる。「間島」を釈放させ、自らのやり方で、復讐、死刑執行をしようというのだ。
 鳴沢らは、今の日本の刑事裁判の制度に疑問を持ちつつも、刑事としての役割を全うしようとする。そして、以外なもう一人の共犯者が現れる…
 鳴沢達が現実と本心とのジレンマに悩みつつも捜査していく姿は、結構心に響く。苦悩のすえ、貧乏くじめいた行動で、解決に導く姿は、共感できる。
 こういう、人間性にあふれた警察官がいっぱいいるといいんだけどなあ。80点。
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