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五木寛之著 「戒厳令の夜」

 昭和51年作。当時、ベストセラーだった記憶がある。そのころは、五木寛之と言えば、「青春の門」しか興味がなく、それ以外の作品は全然手にも取らなかった。間違いなく、戦後日本を代表する作家のひとりであるのだが… 今まで、忘れていた自分に「反省」しかない。
物語は学生運動で過去に逮捕歴のある元美術史生徒の江間隆之が、ある福岡の酒場である、一枚の「絵」に出会ったところから始まる。その絵はスペインの幻の画家パブロ・ロペスのものだった。江間は恩師の秋沢助教授を訪ねるなどいろいろと調べるうちロペスの幻のコレクションが、日本のどこかに眠っていることを突き止める。直後、秋沢助教授が謎の自殺を遂げる。江間は、右翼の老浪人、「鳴海望洋」秋沢助教授の娘「冴子」らとともにロペスの幻のコレクションを追い始める。
 昭和23年ごろ、炭鉱国管疑獄事件が起きる。その背後のもみ消し工作にどうやらロペスのコレクションが使われたらしい。そのコレクションの行方は右翼の大物政治家「原島雄一郎」の手元にあるらしい。鳴海望洋は、かつてのネタをもとに原島を揺さぶり、コレクションを手に入れようとするが、逆に江間や冴子とともに生命を狙われる。何とか鳴海の従臣「黒崎」の機転で命は助かったものの、江間と鳴海は全国に指名手配されてしまう。鳴海は黒崎に命じ、黒崎の昔の仲間により、自衛隊のはぐれ者部隊を組織し原島の手から、ロペスの幻のコレクションを手に入れる。しかし、鳴海と黒崎は、徐々に追い詰めれ命を落とす。しかし、コレクションだけは、鳴海の協力者「康美」らのてにより、無事脱出に成功する。その頃、江間と冴子は自らを「外道」
と称する学者「水沼隠志」先生のもとにかくまわれる。そこで初めて二人は結ばれる。鳴海や黒崎の命を賭けて、手に入れたロペスの幻のコレクションを本来の持ち主の「チリ」の政府の元へ返すためチリの首都、サンチァゴに向かう。おりしも、チリはアジェンデによる社会主義政権下にあるが、ピノチェト将軍による軍事クーデターの「前夜」にあり、ついにクーデターの日となった。そして、再びロペスの幻のコレクションは、日の目を見ることもなく、埋もれていった。
 極めて、ざっとであるがこんな粗筋かな。この中に、いろいろな話の要素が詰まっていて飽きさせない。冒険小説的なストーリー展開をする価値思えば、民俗学の漂白の民「サンカ」についての問題を提起。そして「戒厳令下」のチリの姿を描くことにより、炭鉱国管疑獄や原島や鳴海のかかわりから今後の日本のあり方に疑問を提起している。何ともいろいろな感想を持ち、考えさせられる小説であった。
 この作品は、ほぼ35年も前に書かれたが、まさに今のそしてこれからの近い将来の日本を暗示しているような気がする。本当に今の政治の在り方でいいのか読みながらさらに疑問を強く持ってしまった。
 かなり昔「サンチァゴに雨が降る」という映画が公開され、題名だけは記憶に残っていて(未見ではあるが)
ああ、そういうことだったのと初めて知った。(「サンチァゴに雨が降る」とはクーデターが発生したことの、マスコミからの国民への合図。)
 とても読みごたえがあり、面白かった。80点。
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